スーパーマンの立喰いそば/オジさんひとり荒野に立つ!
<<
作成日時 : 2008/06/25 00:58
>>
トラックバック 0 / コメント 3
五十才という節目を目前に控えた自称「小市民」のオジさんが、私鉄沿線の駅から三歩の場所にお店を開きました。 このところ、開店の話が続いてしまいますが、今回は「立食い蕎麦開店記」。楽しむための蕎麦が主題のボンビバンらしくはないけれど、今回主役の彼も元を質せば趣味がこうじて蕎麦の世界に入り込んだ人。そして彼はなんとスーパーマンだったのです!!
スーパーマンといってもデイリィ・プラネット社の新聞記者に身をかりた「クラーク・ケント」ではありません。正確にいえば大手スーパーで新業種開発に携わってきた元スーパーマン。
激動する業界の荒波に揉まれ続けること二十数余年。少し疲れたなぁと感じていた矢先の一昨年に、思い切って会社を退職し「手打ちそば店開業」を目指して「永山塾」に来られました。
赤坂「蕎麦 永山」閉店までの四ヶ月間のわずかな期間でしたが、毎日通って来ていました。その後も塾には時間がある時に顔を見せていたのですがしばらく連絡が途絶えていた時期がありました。
その間に彼のなかで次第に考え方が変わってきたようです。
小さな手打ち蕎麦の個人店舗では無く、二十数年に及ぶスーパーでの経験を活かして、発展性のある商売をやりたいとの思いが浮かんで来たそうです。拡張出来うる可能性があり物販的要素の強いスタンド形式の立喰い店を運営していこうと考えました。(本人の弁)。
これは彼がこの一年半の間にぶつかったさまざまな現実から弾き出した彼なりの答えでした。製麺会社や飲食店を経営する彼の同級生の友人の協力で、物件を探し出し今回の開店にようやく漕ぎ着けました。
先ず、最初に行詰まったのが物件探しです。そりゃ、日本中の誰でもが知ってる大看板を背負って店舗開発をしていた時とはわけが違います。手頃な広さと家賃の貸店舗を見つけていざ、オーナーさんに交渉しても「初めて商売を始められるの」「経験が無いから」等、つれない態度で対応されたそうで(本人の感想)、思うように交渉が進まなかったようです。
よい物件が見つかっても保証金がべらぼうに高く、好条件、好立地はほとんどが大手の飲食業者が押さえている事に彼もがっかりとして諦めざるを得なかったそうです(いってる本人、元大手)。それからしばらくの空白期間が過ぎて…
そして苦節一年半、やっと物件が決まりました。私鉄K急線「N駅」。
二十年間、立喰い蕎麦をやっていた店を居抜きで借りる事ができました。
駅から徒歩三歩! こんなに近いと散歩もできない。
手打蕎麦店を諦めた背景の一つに「労働力の問題」もあったそうです。
彼自身がほとんど一人で運営しなければならない状況ですから、蕎麦の手作りは難しい。
信頼している大学時代の友人が製麺をやっていて、いろいろと便宜を図ってくれる等のこともあってスタンド形式の蕎麦屋を選択したのです(本人曰く)。
店舗の改装工事と並行しての「求人」と応募して来た人の面接を行ないます。
ここで良い人に巡り会えるかどうかは成功の鍵です。やはり、人が「宝」ですよ。
ここでも苦労は絶えません。なかなかお互いの条件に合致する人がいないのです。
頼みの綱は旧知の人にお願いする他はありません。それにしてもなかなか都合がつかぬもの。
当初は、低予算で店舗を確保し既存設備を最大に活かして投下資本の早期回収を目論んでいたのですが(本人、ほくそ笑み)工期が大きく遅れて予算も膨らんでしまったそうです。
工期遅れの主な原因は、老朽化している建物の不具合と居抜きで引き取った諸設備の故障によるもの。新品を買うのと同じくらいかかりました(本人、苦笑)。
動力電気の許容量がビル全体でオーバーしていたり、空調の排水で店の前が水浸しになったり、その補修工事等の予想もできない問題が次々に出て来て、ほとほとまいっちゃいますわ(本人、大苦笑の後に泣き)。
厨房機器も入っていよいよ店らしくなってきました。
彼自身が考案した『自動水流式麺洗い機』です。
新案特許ですよ、すごいでしょ!って(本人だけ感心)。
そしていよいよプレオープンの日。店名「そばっ晴°」とはあっぱれです。
彼の奥さんも今日はお手伝いです。お客様との会話もはずんでいます。
笑顔の可愛い彼女にはぜひ、毎日店に立っていて欲しいなと思うのですけれど…。
開店後、慣れるまでしばらくの間は朝と昼のみの営業ですが今後、夜は「焼き鳥と酒と蕎麦」の店として展開予定。
とにもかくにも、店は走り始めました。
夢はひとそれぞれで違うもの。夢を実現化するかたちもやはり一人ひとり異なります。
大きな会社の一員として過ごして来た日々とは、まったく異なる世界が始まったところです。
これからは小さなちいさな看板を守ってゆくのです。ただし、その看板は間違いなく自分自身の看板に成っていくはずです。今後も様々な障害や困難がある事でしょう。体力的にも経済的にも以前と比べて、きつくて大変だろうけれど気配りを忘れずにとにかく、がんばってください。スーパーマンがソーバーマンに変身していく為に!
タテガミをなびかせて荒野の風に立ち向かうライオンのように。
オジさんもひとり荒野に立つ!(少ない前髪なびかせて…本人はいってない)。
肝心の蕎麦を注文するのを忘れていました。
夏の立喰い蕎麦の定番「冷したぬきそばをお願いします」
最後にこの何年かの付き合いの中での、彼に対する最大のアドバイス。
「ねぇ、蒲鉾、もっと厚く切って!」
|