そば米をご存じですか?/蕎麦料理の名脇役
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作成日時 : 2008/04/24 19:43
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そば米は煮て良し、茹でて良し、煎って良し、炊いて良し、抽出して良し、揚げてまた良しの八面六臂の大活躍でめくるめく七変化。蕎麦料理にかかせない名脇役。いや、蕎麦料理の知られざる主役ともいえる存在なのです。そば米とはいったい何者なのか? さてその正体やいかに!
混乱するといけませんから「玄そば」と「抜き実」と「そば米」の違いを整理しておきましょう。
「玄そば」は収穫したそばの実で黒い外皮(そば殻)が付いています。この外皮を取り除いた物が「抜き実」で表面の色はそばの甘皮の色で薄緑。この玄そばと抜き実は挽くと「そば粉」になります。「そば米」は玄そばを加工したもので乾物の一種です。玄そばに塩を加えて煮てあるいは蒸して、膨張して来たところを引き揚げて干して乾燥させた後、丁寧に外皮を剥いた物。信州、徳島の祖谷,山形などで昔から伝えられてきた伝統食品それが「そば米」です。
蕎麦料理には絶対にかかせない食材なのですが、このそば米は意外に知られていません。もっとも蕎麦料理自体が広く知られているわけではありませんので当然な事ではあるのですけれど…。
そば米を使った料理の代表格がこの「そば米の吸いとろ」でしょう。いわば古典ですが、今回は一工夫して出汁にとろみをつけてそば米を柔らかく固めてあります。この作り方ならそば米に味がのりますしポロポロとこぼれることがありませんので食べ易くなっています。また、とろろとの絡みも程良い感じです。
そば米のいちばん一般的な使い方は茹でる事でしょう。その茹で方です。
一度水で軽く洗ったそば米をたっぷりの水で茹でます。
沸いたら一度茹でこぼして再び水茹でます。
そば米が少し白く透き通ってきたら水に放ちザルにあけて冷まします。
季節の食材とじょうずにあわせれば、そば米を茹でるだけでも立派な蕎麦料理になります。
たて塩の花山葵と供に薄口の出汁を張りました。今の季節なら蕗、筍なども良いですね。
温度差玉子に茹でそば米をのせて。私の今日の朝ご飯の一品。
そば米は揚げると最高の脇役俳優になります。
高温(180℃)の油温で揚げればうまくハゼます。
蕎麦に振りかけたり、味噌に混ぜたり様々に応用できますが、プチプチとした歯触りが身上ですので提供寸前に使いましょう。『そばを食べよう・打ってみよう!』 第六回 薬味/焼き味噌を参照下さい。
この春先は蕗味噌に加えていただいておりました。教室でお教えしたところ、酒の友には最高と喜んでもらえました。
「ぶっかけ蕎麦・蕎麦焼き味噌付き」
この蕎麦はまさに揚げそば米あっての物です。
さて次は煎ってから煮出して風味を抽出します。まずはフライパンで煎ります。
煎り付けを弱くすれば「蕎麦茶」になりますが、思い切り強く焦げる手前まで煎り揚げてこれを煮出します。分量の目安は煎ったそば米100gに水1200ml。また、水では無く牛乳で煮出せばミルクプリン、そばプリン、そばアイス等に使えます。
濾してみるとこのような濃いそば茶(珈琲風?)に出来上がり。
そのまま飲んでも香りが強くておいしいのですが、ゼラチン等の凝固剤で固めて「珈琲風蕎麦ゼリー」にする事が多いです。これは「そばで作りました」といわなければそばが使ってあるのが解らないのでお客様にお出しする時にはかならず説明を必要とする、ある意味では手間のかかる(笑い)一品でもあるのです。ここでは「スプーンフル蕎麦珈琲」にしました。さらしな粉と生クリームをホイップした上に盛りつけます。
そば米というくらいですからふつうの米と一緒に炊き込んで使う事もあります。蕎麦飯と呼んでおります。米7にそば米3の割合で炊きます。その際にそば米は良く洗う事が大切でこれの手間を省くと雑穀の臭いが強く感じられて米の味を邪魔してしまいます。
「鴨御飯」は鴨肉を小間切れにして微塵切りの葱を加えてかけ汁で煮詰めた汁をこしらえておき、炊き上げた御飯にまぶします。
お粥を作る要領でいったん茹でておいたそば米を途中で加えて作る「そば粥」です。これは柚子釜仕立てにしてあります。
こうして改めて見てみるとはっきりと解るのですが、そば米の応用範囲は本当に広いのです。
ただし、なかなか入手しにくいといわれます。大きな蕎麦製粉所では扱っている所も多くなってきたようですので問い合わせてみて下さい。最近は都心のデパートの乾物店などで見かける事もあるのですが、皆さんの廻りではいかがなものでしょうか。決して高価な食材ではありませんし、本来が保存食ですので見かけた時は買い置いても良いと思います。
「蕎麦料理は村井政善に限ります」と強い語気でいい切っていたある日の師の事を思い出します。昭和初期の料理研究家の第一人者として名を馳せていた村井政善はその著書「栄養と蕎麦料理集成」の中で「蕎麦ミール」等を使って様々な蕎麦の料理を紹介しています。
また別に今、私の手元にある「日支洋麺類料理百種」の中にもいくつかの蕎麦料理が紹介されています。村井政善が大日本料研究会の名で書いたと伝えられている小冊です。
蕎麦ミールとは今でいう石挽きの粗い全層粉なのですが、まさに現在の粗挽き粉ブームを予言するような着眼や八十年も昔に「蕎麦のケチャップ煮」「蕎麦コロッケー」等の当時としては飛んでもない発想を持っていた事には驚かされます。師も蕎麦料理の先駆者として尊敬の念を持っていた事と想われます。今日、蕎麦の料理を作りながらふっと思いました。
蕎麦料理は大きく分けると「粉」「粒」「蕎麦切り」で作られます。
中でも粒のそば米は扱い易く手軽に七変化してくれますので多様性に富み使い手としては実に有り難い食材です。
発想次第で今後も無限に広がって行きそうな気にさせてくれる存在のそば米。
とにもかくにもそば米あっての蕎麦料理ということでございます。
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