葱を焼きましょう/懐かしきかな鳥南そば
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作成日時 : 2008/04/11 02:23
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私が蕎麦の世界に入った頃は、まだ鴨を使った蕎麦を売っている店は少なくて、肉類の蕎麦といえば鳥南蛮が一番のお馴染みでした。鴨の蕎麦が幅をきかせるようになってきてからは、すっかり影の薄くなった感のある鶏肉の蕎麦ですが、鴨よりあっさりした風味にはすてがたい味わいがあります。
最近は手打ち蕎麦屋に鴨肉が定着したようです。鴨せいろなどは特に人気のあるお品書きになっていますね。
三十年も前になりますか、蕎麦屋に入って「鴨南」を頼んだら鶏肉の蕎麦が出てきました。
店の人に「あの〜これ鳥南ですよね、鴨南を頼んだのだけれど」と恐る恐るいいますと店の人いわく「それは鴨南で鳥のもも肉を使ってるの、鳥南はむね肉なんですよ(そんなことも知らないのか)」との事。何か全然訳のわからぬままにそれとなく理解納得してしまう当時の私なのですが、その店の鴨南と鳥南の値段の差が百五十円位あったので得したような損したような複雑な気持ちで食べた事は良くおぼえています。
思えばこの頃の蕎麦屋で鴨を扱って商いしている店は本当に少なかったのではないのでしょうか。鴨南を頼んだ私にしても鴨の味を知らないわけで、いつも食べている鶏肉が出てきた事でその違いを認識できただけなのですから。
さて、その鴨をはじめて食べたのは西神田の店に入ってからでした。
ただ、その頃はまだ「鴨せいろ」は作っておらず店では温かい「鴨南蛮」が品書きにあるだけでした。
葱をザク切りにしてサッと炒めて汁に入れ、そこに切りっぱなしの鴨肉を入れて一煮立ちさせてから仕上げに粉山椒をあてる(振りかける)結構ラフな作り方をしていたものですが、それはそれで野趣があり、鴨肉がチリチリと丼じゅうに広がって「これぞ鴨の蕎麦でごんす」という雰囲気がありました。
鴨せいろの品書きが一般的に広まってくるのは、その後五、六年たってからだったと思います。
話が鴨にいってしまいましたが、今回の主役は鶏肉です。最近では鴨もスーパーなどでも売られているのを見かけるようになりましたが、家で作るとなるとやはり手軽に買える鳥肉が一番。
味の濃いもも肉を使います。
もも肉を写真のように三枚に切り分けて、包丁を入れて肉が平たくなるように開いていきます。
型良く丸めてからラップにくるみます。冷凍庫に入れて少し固くなるまで保存します。
鶏肉が固まるまでの合間に葱を切っておきましょう。
火の通りを良くするためと食べた時に芯が飛びたさず、噛み切り易いように切れ目を入れていきます。まず、葱を6cm位に切ります。
コロコロと転がして葱の座りの良い所を探して
片面五カ所、両面で十カ所に切り込みを入れていきます。斜めに浅く二カ所切り込みます。
三カ所目の切り込みは深く入れます。残りの二カ所は浅く切り込みを入れて片面終了。
裏側にも同様に切り込みを入れると…
こんな感じになります。
フライパンに油を敷いて焼きます。鳥の皮を取っておき焼いて出た脂で葱を焼いても良いですね。これは鴨の蕎麦で葱を炒める時にやり方と同じです。
きれいな焼き目が付きました。見るからにおいしそうでしょう。
鴨が葱背負って…とはうまくいった物ですが、鴨ならずとも焼いた葱と鳥は良く合います。
冷凍庫から取り出したもも肉です。あまり固く凍っていると切る時に包丁が刃こぼれしてしまいますから、触ってみて少し柔らかく感じる位を確認してから切って下さい。
切っていきます。写真では切り幅が厚く見えていますが1cm位です。
今回は、二種類の鳥蕎麦を作ります。
まずは、「鳥蕎麦冷かけ」です。
この蕎麦には鶏肉を焼いて使います。こうする事で鳥の脂が程良く除かれるのと同時に鳥の肉汁の汁への流出を抑えられるので冷たい汁が濁らず、余分な脂が浮く事がありません。
ワケギは軽く茹でてから、包丁の背を使ってヌルミをこそぎ出して添えました。季節の山葵の花を飾って出来上がり。ワケギのシャキッとした歯触りが何ともいえないおいしさです。
次は、「鳥せいろ」です。
汁はもり汁とかけ汁を同量で合わせます。
この汁を火にかけて焼いた葱を入れて汁が沸き出したら鶏肉、ワケギ等を入れます。
汁を濁らせ無いために肉は必ず汁が沸いた所に入れます。
この鶏肉は焼かずに入れるほうが脂が出てコクのある汁になります。
良い香りがしてます。冷たい蕎麦でどうぞ。
蕎麦を皿盛りにして汁を「ぶっかけ」にしても良いかもしれませんね。
「鳥南蛮」「かしわ南蛮」「若鳥そば」等、鳥蕎麦にも様々な名称があります。私の修業先の系列の店では「ひな鳥そば」といってかわいい呼び方をしていました。鳥の蕎麦って何故か気取りの無い柔らかな懐かしさがあります。私だけでしょうか?
最初に出た話なのですが、三十年の時が過ぎても昨日の事のように、たかだか一杯の蕎麦の事を恨めしくおぼえているのですから、我ながらよほど悔しかったんですね。百五十円が。
鳥の蕎麦を食べたのに『良い鴨にされた』ってところでしょうか!
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